札幌キャンパス敷地内にある面積約15ヘクタールの林地で、標高差45mの傾斜地に谷地形をなしています。周りをぐるっと道路と宅地に囲まれ、やや孤立した環境となっています。自然生態系の実習ではこの林を活用し、基本的な調査方法等を学びます。また、多くの卒業研究が行われてきました。ここでは光風園の歴史や、四季の移ろいと生物相についてご紹介します。
以前は神社のお祭りを行なったり、ジンギスカン鍋を囲んだりする、地域住民の憩いの場だったそうです。昭和43年ごろに東海大学が土地を譲り受ける前に光風園と名付けられました。かつては、年に2回の林床の草刈りが行われ、山菜が取り放題で消失する植物種が生じるなどしていましたが、現在は林床の草刈りを中止し、部外者の動植物の採集行為を禁止し、保全への取り組みが行われ、ようやくそれが軌道にのってきました。
4月の終わりに雪がほぼ消えると、一気にエゾエンゴサク、オオバナノエンレイソウ、ナニワズ、ヒトリシズカなどが咲き始めます。この頃、園内にある2つの池やそれに通じる水路で両生類の産卵も見られます。夏鳥が来始める頃には、ミズナラ、シラカンバ、シナノキ、イタヤカエデなどの広葉樹が一気に展葉し、林床には、ホウチャクソウ、ツクバネソウ、オオアマドコロが咲き始めます。少し遅れてオオウバユリも花をつけ始めます。夏鳥は、オオルリ、キビタキ、センダイムシクイ、ヤブサメなどが毎年やってきます。6月の半ば、夜の池には多くのコウモリがやってきて、餌を食べるために飛びまわります。9月に入ると、たくさんのキノコ類が出現し、あっという間に降雪期を迎えます。
●生物相調査報告
・東海林亨・内田暁友・河合久仁子(2021)東海大学札幌キャンパスのシダ標本リスト. 東海大学紀要・生物学部, 9: 33-38.
・竹中万紀子・佐野加奈子・山根彩佳・奥村栞梨・工藤結貴・倉谷忠禎・山中隆寛・安齋光流・竹中践(2017)東海大学札幌キャンパス「光風園」の生物相:種リストの追加・補訂 (1). 東海大学紀要・生物学部, 6: 33-63. PDF
・ 東海大学札幌キャンパス生物学部光風園生物調査グループ (2015) 光風園生物調査報告書 2013-2014年の記録. (監修 竹中践・竹中万紀子). pp.30
・竹中践・竹中万紀子 (2002) 光風園の生物 光風園の生物調査グループによる2000年、2001年の調査結果. pp.35
●卒業研究
2020 特定外来生物オオハンゴンソウの種子生産量に影響する環境要因 2019 札幌市に生息するコウモリ類の生態を探る(4) 2019 光風園の森林動態~QGISでの長期的解析への基盤の作成~ 2019 シダフロラから読み解く光風園の微小環境 2018 札幌市に生息するコウモリ類の生態を探る(3) 2018 コウモリの捕食音の時間的特徴と季節的特徴 2018 光風園の森林携帯~調査地1haから見えたもの~ 2018 季節と場所による樹上の土壌動物の種相の相違 2018 札幌市南区におけるカブトムシの分布 2018 東海大学札幌キャンパス周辺の爬虫類三種の生息調査 2018 オオウバユリの成長と繁殖に関する林床環境条件 2017 札幌市に生息するコウモリ類の生態を探る(2 2017 ナガメ(Eurydema rugosa)の耐寒性 2017 東海大学札幌キャンパス周辺におけるニホンカナヘビの生態調査 2017 スミレ類における開放花と閉鎖花の季節による変動と環境要因 2017 東海大学札幌キャンパス周辺におけるヘビ類の生息状況 2017 札幌市南区の分断された小規模樹林地におけるシジュウカラの巣箱利用 2017 札幌市内の樹林内の止水域における水中昆虫相) 2016 札幌市、滝川市におけるコウモリ類の音声の種特性 2016 東海大学札幌キャンパス周辺におけるニホンカナヘビの生息状況 2016 エゾヒメシロチョウの個体群と食草群落規模との関係 2016 光風園の水路及び小規模の人工池に生息するヨコエビ類の生息状況 2016 光風園の哺乳類とネズミ類の種同定と活動時期 2016 東海大学札幌校舎周辺における林床付近および草地のチョウ類の出現状況 2016 大学周辺における陸貝の分布と生息状況 2016 東海大学札幌キャンパス光風園と東海大学付属札幌校樹林の鳥類相と繁殖状況について 2015 光風園内の池に生息する魚類の駆除に向けた予備的調査 2015 東海大学札幌キャンパス内におけるオカダンゴムシ(Armadillidium vulgare)の個体数の季節的変動 2015 オオイタドリ群落の節足動物相調査 2015 東海大学札幌キャンパス光風園における陸生貝類の分布と生息状況